保護活動について

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● エンリッチメント(犬編・猫編)
● 猫の多頭飼育崩壊 〜崩壊現場の持ち物リスト・注意点〜
● 現役活動家140人に聞いた、⑴今まで苦労したこと、⑵これから活動を始める方へのメッセージ
● チャリティー活動宣伝の重要性

多くの犬や猫が行き場を失う現状

2021年度に全国の自治体施設に収容された犬と猫は、犬が24,607匹、猫は44,514匹でした。全国の民間団体や個人に保護された頭数を合わせると、その数は計り知れません。※統計の最新情報は、環境省ホームページ「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」でご確認ください

犬や猫が行き場を失う社会の仕組みの全体を見ると、犬と猫では異なる課題があり、解決にはそれぞれに合った方法が必要である事がわかります。活動には、いま目の前にいる動物を救う活動と、今後生まれる未来の命が行き場を失わないよう未然に救う活動があります。保護活動は前者の取り組みの一環ですが、まずはどんな種類の活動があるのか見てみましょう。

活動の種類

行き場を失った犬や猫を救う方法は、時間がなくても手軽にできる“お手伝い”や、すでに活動している人を補助するボランティア、現場で直接動物を保護したり、里親を探す譲渡会を開催するなど様々です。

「犬や猫のために何かしたいけれど、何をすればいいかわからない…」
そんな時は、以下の「自分にあったできることを見つけよう」を参考に、まずはご自身に無理なくできる範囲を確かめましょう。

ご自身に無理なくできる範囲がわかったら、以下の早見表とリストで、興味があるボランティア/活動があるか探してみましょう。その他の活動を検索したり、ご自身が考えた新しい活動を始めるのも良いですね。

一人ひとりにできること

<アレルギーがあってもできる活動>
● SNS拡散/周知:今からでも無料で始められる、指一本のボランティア
● 法改正/規制強化等の署名活動:署名する、署名を集める、発起人になる
● チャリティーイベント補助:物販補助など単発のお手伝い

<犬や猫を直接的に救う活動>
● 施設ボランティア:実際にシェルターに行って、犬の散歩や掃除、ブラッシング、遊びなどをする
● 搬送ボランティア:飛行機や車で保護動物の移動を補助する、単発ボランティア
● 預かりボランティア:保護団体や保護主から、保護動物を一定期間預かりお世話するボランティア
● 看取りボランティア:病気や老衰で先が長くない保護動物の介護やお世話をするボランティア
● 保護活動:行き場のない犬や猫を一時的に保護して、譲渡に繋げる活動
● ミルクボランティア:自力で生きられない乳飲み子の授乳や排泄等を、一時的に補助/お世話するボランティア
● 地域猫の餌やり:不妊去勢手術された野良猫に毎日餌を与えること

<幅広く影響を与える活動>
● SNS拡散/周知:今からでも無料で始められる、指一本のボランティア
● 法改正/規制強化等の署名活動:署名する、署名を集める、発起人になる
● TNR(地域猫活動):主に野良猫を対象に、捕獲、手術、リリース、その後の餌やりなどを行う活動
● 譲渡会/イベント補助:譲渡会やチャリティーイベントを開催または補助する活動

<その他>
● 物資支援:タオルや毛布などを施設に届ける、または周りに呼びかける
● 寄付:無理なくできる額をコツコツと、寄付を動物へ還元する相手に送る

5Freedoms / 5つの自由

「5Freedoms(5つの自由)」は、産業動物や伴侶動物を含む全ての動物の福祉に配慮するため、1965年にイギリスで制定されました。特に直接的に動物に関わり活動する際は、以下の項目に配慮し、その子がその子らしく過ごせる環境作りを心がけましょう。(その環境が作れない場合は、それ以外の分野で活動しましょう)

保護の流れ<猫編>

日本には狂犬病予防法があり、飼い主不明の犬が屋外にいる場合は、管轄の自治体が抑留しなければなりません。そのため、街で野良犬を見かける機会は少なくなりました。しかし自治体に猫の捕獲義務はなく、屋外で生きる猫は繁殖し続けます。

短命で生存率も低い猫の繁殖能力は非常に高く、メスは生後4〜6ヶ月で性成熟に達します。ヒトや犬など多くの哺乳類が自然排卵なのに対し、猫は交尾の刺激で排卵するため妊娠率も非常に高く、1匹の妊娠猫から約4−8匹の乳飲み子が生まれます。それらの生存率を25%としても、7年間で47万匹に増える計算になります。(※アメリカの研究では、屋外で生まれた子猫の約75%は生後6か月を迎える前に死亡する事がわかっています)

これらの理由から、一般市民や活動家が飼い主のいない猫を屋外で発見し保護する機会は、犬に比べて圧倒的に多いのが現状です。以下は保護初心者向けの流れ(一例)です。保護方法は保護猫や状況、個々の経験に合わせて、猫にとってより良い環境になるよう工夫しましょう。

譲渡前のマッチング

保護動物を譲渡する前に必ず行うのが、里親希望者さんと希望動物のマッチングです。マッチングの内容は保護団体や保護主によっても異なりますが、基本的には⑴里親さんの家庭環境・ライフスタイルが保護動物の性格等に合い、その子らしく安全に暮らせるか確認する意味と、⑵迎えた後に「やっぱり飼い続けられない」と返還されることを防ぐために行います。

里親希望者さんが「迎えたいと思う子」が、必ずしも「実際に飼える子」とは限りません。例えば子猫を希望する高齢夫婦には、猫の寿命等を説明した上でシニアの保護動物を勧めたり、アルバイトで忙しい一人暮らしの学生であれば、いま迎えることが本当に適切かどうかを一緒に考える場合もあります。また、最期まで飼うことが難しい希望者さんには、一時的に(または可能な限り)お世話する「預かりボランティア」の選択肢を紹介しましょう。保護動物にとって、シェルターで暮らす時間は短い方が良いとされています。可能な限り一般家庭でお世話してもらえるよう、譲渡以外の選択肢も持っておきましょう。

マッチングで考えること

たくさん遊びたい子猫から、静かに暮らしたいシニア犬まで、保護動物も多種多様です。どれだけ素敵な里親さんでも、動物の年齢や性格により、相性が合うかどうかを考える必要があります。

家の環境:その子に合った広さ/高さの飼育環境?脱走防止策は?鳴き声等で近隣トラブルにならない?
家族/同居人:その子が必要な運動量を提供する時間と体力がある?
同意:家族全員、特に中心となってお世話する人がその子を迎えることを希望している?
ライフスタイル:留守番時間は?お世話したり遊ぶ時間は?その子が休みたい時に静かに休める環境?
引越しの可能性:犬は猫より連れて行く際のハードルが高く、犬が飼える賃貸の選択肢も少ない
経済面:栄養価の高いフードを買ったり、必要な医療を受けさせたり、最期までお世話できる?
先住動物の有無:その子の他の動物との相性は?(先住の年齢、性別、性格と合う?)
後見人の有無:その子に残された時間(時に10、20年)を、不安なく託せる?

活動家が直面する問題

犬や猫と直接的に関わる活動をしていると、意見や気持ち、方針がぶつかり合う瞬間が幾度となく訪れます。共に活動する仲間との考え方の違いもあれば、自身が頭で考えることと心で感じることのギャップである事もあります。そんな時は、精神的に自身が今後も継続して活動できるようにする事を優先し、ご自身がより納得のいく方法を選ぶと良いでしょう。

依頼を断る事の大切さ

活動をしていると、活動中に遭遇した子猫やTNRでリリースできない子の保護、そして自身の活動範囲外からも、保護の相談や依頼が増えます。相談内容も様々で、解決に必要な所要時間や労力は、協力者の人数や猫の状態等によっても異なります。多くの活動家は、自身の適正保護頭数をすでに超えていたり、時間や経済的に余裕がない場合でも断らず、「でもここにケージを置けば…」「今の子達には悪いけど…」と考える傾向にあります。

欧米では、1日8時間猫の世話をしたとして、1人が適正管理できる猫の数は最大12匹と言われています。スペースと人手、資金的に余裕があり、いま管理している動物(飼い犬や猫を含む)にさほど影響しない場合を除き、自身に無理が生じる状況下での保護依頼は断りましょう。その代わり、支援や搬送、拡散、人の紹介など、保護以外でできることを伝え、丸投げではなく相談者自身が最大限取り組めるよう、可能な限りサポートしましょう。

1人の活動家が生涯に救える動物の数は、保護頭数を制限できるかどうかで左右されます。ある統計では、保護頭数が少ないほど譲渡率が高く、結果的により多くを救えることがわかっています。

より多くを救うポイント

◆保護活動は無理なく継続することで、結果的(統計的)により多くの命を救う
1. 個人で保護活動をする場合、自身の時間、資金、スペースで余裕がどれほどあるか把握する
2. その「余裕」に合わせて無理なく保護できる頭数を計算する
3. 2番で出た頭数をあなたの適正保護頭数の上限として、そこから2匹引いた保護頭数をキープする
(その枠は突然の保護や病気になった子、手がかかる子のためにとっておく)
4. 保護動物全頭を1日も早く里親さんに繋げる努力をする
5. その後は譲渡した数だけ保護する

◆肝に銘じること
・自分1人で、助けが必要な動物全頭は救えない
・災害時や自身に何かあった時、増やした頭数分の命の責任が増える
・頭数を制限することで、1匹の医療ケアや人慣れ、里親探しにかけられる時間が十分に取れるため、結果的に早く里親さんに繋げられる

◆保護頭数を増やす方法
普段から預かりさんを確保しておく

現役活動家さんに学ぶ

ヒトノワでは、犬や猫に関わる活動をしている方々を対象に、匿名のアンケート調査を行っています。(アンケートは団体、個人、活動歴を問いません)

現時点で、140名の現役活動家さんにご協力いただきました。実際に活動されている方々の活動内容や、「過去の自分に伝えたい事」を見てみましょう。

想いは強すぎても届かない

犬猫福祉の活動に取り組んでいる時点で、動物への想いは人一倍強いと言えます。その強さが命を救うための行動に繋がる一方で、想いが強過ぎると逆効果になることも。TNRや保護、譲渡の活動では、猫嫌いの人を含め、様々な立場、考え方、思いの人と関わり、コミュニケーションを取る機会が増えていきます。どんな現場でも、その時その動物を救うためにすべき事(目的)を明確にし、それを果たすために必要な事に注力しましょう。「こうしたい」というエゴではなく、その子の福祉を守るには何が必要かを考えると良いでしょう。

多くが経験する悩みとは

アンケート調査によると、ある程度の活動歴/経験があったり多くの現場を抱えている活動家は、保護動物や現状、現場、人間関係など、様々な事で悩んだり落ち込む経験をします。心身ともに疲弊する時もあるかもしれませんが、活動を継続するためには感情を整理したり、割り切ることも大切です。

保護動物と関わって…

犬や猫の一生も、QOL(生活の質)が高く素敵な時間であってほしいもの。生まれてすぐに助けが必要になった命を、ずっと暮らせる家族に送り出すまでのサポートをしたり(ミルクボランティア)、短い期間だけその子の居場所になったり(預かりボランティア)、犬生や猫生の途中から譲り受けたり(里親)。保護動物との関わり方は様々ですが、最期に一生を振り返った時、その子らしく生きられた生涯であり、その時に涙を流す人がそばにいてくれたら…。何歳であっても、きっとそれがその子にとっての「幸せ」ではないでしょうか。保護活動は、そんな「幸せ」を増やすお手伝いなのです。